「怒鳴られるのは自分が悪いから」「これくらい普通かも」——そう思い込んで、つらい気持ちにフタをしていませんか。閉じた職場では、おかしいことがおかしく見えなくなりがちです。でも、あなたが感じている「しんどい」は、ちゃんと根拠のあるサインかもしれません。少しずつ、自分を守る準備をしていきましょう。
まず「これはハラスメントかも」と気づく
人格を否定されたり、必要以上に責められたりするのは、指導ではありません。たとえば、こんなことが続いていたら要注意です。
- 大勢の前で名前を出して長時間怒鳴る、人格を否定する言葉を投げる
- 罰金やペナルティをチラつかせて精神的に追い込む
- 無視・仲間外れ・あからさまな差別的扱いをする
- プライベートや容姿を執拗にいじる、しつこく連絡してくる
- 「辞めたら違約金」「親に言う」などと脅して支配しようとする
これらは、職場での力関係を使った嫌がらせ=パワハラ・モラハラにあたる可能性があります。どんな業種でも、人として尊重される権利はあなたにあります。
「これくらい普通」と思わされやすい理由
「この職場はそういうもの」「厳しいのは当然」と教え込まれたり、周りのスタッフも黙って耐えていたりすると、自分の感覚がどんどん麻痺していきます。生活を勤務先に依存している場合、「ここを失ったら困る」という不安が、声を上げることへの大きな壁になります。
でも、どんな業種・どんな雇用形態であっても、人を傷つけるような扱いは許されません。「業界の慣習だから」という言葉は、あなたを黙らせるための言い訳として使われることがあります。自分の感覚を信じてください。
「記録」があなたの一番の味方になる
つらい状況から抜け出すとき、何より力になるのが客観的な記録です。感情ではなく事実を残しておくと、後で相談するときに話がスムーズに進みます。
- いつ・どこで・誰に・何を言われた(された)かをメモする
- メッセージ、シフト表、給与明細のスクリーンショットを保存する
- ボイスメモなど、可能な範囲で音声を残しておく
- 体調の変化(眠れない・涙が出る等)も日付つきで書き留める
覚えておいてほしいのは、「証拠を残すこと」と「我慢し続けること」はまったく別だということ。記録は、あなたが逃げるための切符であって、耐えるための道具ではありません。
記録したデータは、勤務先の人に見られないよう注意してください。スマートフォンにロックをかける、クラウドにバックアップを取るといった対策も合わせて行いましょう。相談や退職の手続きに入るまでは、誰かに見せる必要はまったくありません。まずは自分のためにひそかに残しておくだけで十分です。
一人で抱えず、距離をとる
無理に直接対決する必要はありません。安全を最優先に、まずは距離をとることを考えてください。
- 信頼できる友人や家族に状況を話しておく
- 退職を決めたら、辞める意思は記録の残る形(メッセージ等)で伝える
- 違約金や罰金を盾に引き止められても、その場で署名・支払いをしない
- 身の危険を感じたら、その場を離れて安全を確保する
「違約金を払え」と言われたら
「辞めるなら違約金を払え」と言われることがありますが、こうした請求がすべて正当とは限りません。金額の根拠が不明確だったり、契約書に書かれていない条件を後から持ち出したりするケースもあります。その場で払ってしまうと取り戻すのが非常に難しくなります。どんなに急かされても、「確認してから返事します」と言って、その日のうちには署名も支払いもしないようにしてください。
自分を責めないために
「我慢できなかった自分が弱い」と思う気持ちはとても自然なことです。でも、ハラスメントの責任は、それをした側にあります。あなたが言い返さなかったから悪化したのではなく、相手がやめなかったことが問題なのです。どうか、自分を追い詰めないでください。
困ったときの相談先
一人で決めなくて大丈夫です。無料で相談できる場所があります。
- 労働基準監督署(総合労働相談コーナー):賃金や労働条件、職場のハラスメントについて相談できます。
- 法テラス(日本司法支援センター):収入などの条件を満たせば、無料の法律相談や弁護士費用の立替が利用できます。
- 警察相談専用ダイヤル #9110:事件にする前の段階でも、安全に関する不安を相談できます。身の危険が今あるときは110番を。
- 各自治体の女性相談窓口:お住まいの市区町村やDV相談窓口でも、女性向けの相談に対応しています。
「こんなことで相談していいのかな」とためらわなくて大丈夫。相談窓口は、あなたの同意なく勤務先に情報を伝えることはありません。「匿名で相談したい」と最初に伝えれば、その意向を尊重してもらえます。あなたの安心は、何よりも優先されるべきものです。