給料日に明細を見て、「あれ、思っていたより少ない…?」と感じたことはありませんか。制服代や備品代、送迎代があたりまえのように引かれていて、なんとなく「そういうものかな」と受け入れてしまう人はとても多いです。でも、その天引き、本当に正当なものなのか、いっしょに確認してみましょう。

そもそも「天引き」にはルールがある

お給料は、働いた人に「全額」「直接」払うのが大原則です(労働基準法の賃金支払いの原則)。だから、勤務先が勝手にいろいろ引いてしまうのは、本来は認められていません。

制服代や送迎代を引くなら、ふつうは次のようなことが必要だと考えられています。

  • 何を・いくら引くのか、あらかじめはっきり決まっていること
  • 働く本人がきちんと理解して同意していること(できれば書面で)
  • 金額が実費の範囲で、不当に高くないこと

口約束だけだったり、「みんな引かれてるから」で済まされていたりする場合は、一度立ち止まって考えていいサインです。

「同意」とはどういうことか

よくあるのが、「入職のとき書類にサインした」というケースです。でも、その書類を十分に読む時間があったか、説明がわかりやすかったか、断れる雰囲気があったかが問われます。「とにかく早くサインして」という状況でサインしたものは、法律上の有効な同意とみなされにくい場合があります。自分を守るためには、天引きの内容が書かれた書面をもらっておくことが大切です。「書面をください」と伝える権利が、あなたにはあります。

ここはチェックしておきたい

  • 契約書や同意書に、天引きの項目と金額が書いてあるか
  • 給料明細に「何の費用か」が分けて書かれているか
  • 引かれたあとの手取りが、最低賃金を下回っていないか
  • 備品を自分のものにできないのに、買い取り価格を請求されていないか
  • 罰金やペナルティの名目で、給料から差し引かれていないか

とくに大切なのが「最低賃金」です。どんな名目で引かれても、働いた時間に対する賃金が、その地域の最低賃金を下回ってはいけないのが原則です。

覚えておいてほしいのは、「同意した覚えのない天引き」や「最低賃金を割り込む天引き」は、正当とは言いにくいということ。あなたが疑問に思う気持ちは、わがままではありません。

明細の読み方

給料明細を受け取ったら、まず「総支給額」と「手取り額」の差を確認してください。その差が、天引きされた合計です。次に、差し引かれた各項目の名前と金額が明細に記載されているかを見てください。「その他」「経費」などの曖昧な名目で一括で引かれている場合は、詳細を聞く権利がありますし、聞いても答えてもらえない場合は問題のサインです。明細がまったく発行されないという状況であれば、それ自体が法律上問題になりうることです。

「罰金」「遅刻代」に注意

遅刻や欠勤があれば、その時間分の給料が発生しないのは当然のことです。ただ、それ以上に「罰として」働いた分の賃金をペナルティで没収することは、原則として認められていません。「働いた時間の賃金はきちんと受け取る権利がある」という意識を持ってください。

「おかしいかも」と思ったら

すぐに勤務先と揉める必要はありません。まずは静かに、事実を集めておくのがおすすめです。

  • 給料明細やシフト表、契約書の写真を残しておく
  • 引かれた日付・金額・名目をメモしておく
  • やり取り(メッセージやメール)のスクリーンショットを保存する

記録を集めることは、勤務先を攻撃するためではなく、あなた自身の話が正確に伝わるようにするためです。自分の給料について確認することは、あなたの当然の権利で、それを理由に不利益な扱いをされることは、法律が守ってくれる範囲でもあります。

困ったときの相談先

「自分のケースは正当なの?」と迷ったら、無料で相談できる公的な窓口があります。

  • 労働基準監督署:賃金の未払いや不当な天引きなど、働くうえでのお金の相談ができます。
  • 法テラス(日本司法支援センター):無料の法律相談や、弁護士費用の立替えなどの案内を受けられます。
  • 警察相談専用ダイヤル #9110:脅しやトラブルなど、緊急ではないけれど不安なことを相談できます。
  • 各自治体の女性相談窓口:状況に応じた支援につないでもらえます。

あなたが「おかしい」と感じた感覚は大切にしてください。その感覚は、正しいことが多いです。少しでも不安があれば、まずは一歩、相談してみてくださいね。