急な出費があって、勤務先に「少し前借りできますか」と頼んだことはありますか。優しく「いいよ」と言ってくれると本当に助かりますよね。でも後から、給料のほとんどが引かれていた、辞めようとしたら「借金があるから辞められない」と言われた——そんな話を耳にすることがあります。困っているときほど少しだけ立ち止まって、確認してみてほしいことがあります。
「前借り」と「前払い」はちがうもの
まず言葉を整理しておきましょう。
- 前払い:すでに働いた分の給料を、支払日より前に受け取ること。緊急時には労働基準法第25条に基づいて請求できる場合があります
- 前借り:勤務先からお金を借りること。「賃金の前払い」ではなく「貸付」の扱いになります
呼び方が職場によってバラバラなこともあります。お金を受け取る前に「これは貸付ですか、それともすでに働いた分の前払いですか」と一言確認しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
前払いなら、もともと支払われるはずのお金を早めに受け取るだけで、新たな借金は生まれません。前借り(貸付)なら返済義務が発生し、利子がつく場合もあります。この区別があいまいなまま受け取ると、「前払いのつもりが、あとから貸付だったと言われた」というトラブルが起きがちです。
できれば書面やメッセージで残しましょう。メッセージアプリで「これは前払いですよね」と聞いて相手の返信を保存しておくだけでも、後々の証拠になります。
前借りで気をつけたいこと
前借り自体が違法というわけではありませんが、条件によっては問題になることがあります。
- 「前借りがあるから辞めさせない」と言われても、退職の自由を奪うことは法律で禁じられています
- 返済のために給料を全額引かれ、手元に何も残らない状況は問題になる可能性があります
- 「借金が残っているうちは絶対に辞められない」という約束は、法的に無効になることがあります
覚えておいてほしいこと。お金を借りていても、あなたには辞める権利があります。労働基準法では、前借りを理由に仕事を強制することは禁じられています。
契約書にサインをしていても、法律に反する内容は無効になることがあります。「サインしてしまった」と後悔する必要はありません。書類の内容に不安を感じたら、それを持って相談することが大切です。
前借りをお願いする前に確認したいこと
すぐに借りる前に、一度立ち止まってみましょう。
- 返済の方法・期間・利率(利子がつくのか)を書面で確認する
- 毎月いくら引かれ、手元にいくら残るのか計算しておく
- 公的な支援(生活福祉資金貸付制度など、市区町村の社会福祉協議会が窓口)が使えないか調べる
- 信頼できる家族や友人に相談できるなら、その選択肢も考えてみる
「断ったら関係が悪くなるかも」と感じることはあります。でも、お金の借り方を慎重に考えることは、あなた自身を守ることにつながります。「少し考えさせてください」と言うことは、何も悪いことではありません。
困ったときの相談先
お金のこと、仕事のこと、どこに相談すればいいかわからないときも大丈夫です。
- 労働基準監督署:前借りを理由に退職を妨げられているなど、労働に関するトラブルを相談できます。
- 法テラス(日本司法支援センター):無料の法律相談。お金の貸し借りに関する権利や対処法を弁護士に聞けます。
- 警察相談専用ダイヤル #9110:脅されている、身の危険を感じるときの相談先です。緊急時は110番を。
- 各自治体の女性相談窓口:住んでいる市区町村や都道府県の窓口で、生活の悩みも含めて話を聞いてくれます。
借りた金額や時期のメモ、給料明細、やりとりのスクリーンショットなどがあると相談がスムーズです。全部そろっていなくても、「こういう状況で困っている」と話すだけで、専門家は一緒に考えてくれます。一人で抱え込まず、頼れる場所に声をかけてみてください。